⑨の続き
2019年9月13日
夜明け。夕日も星空も綺麗だが、朝の冷えた空気も気持ちいい。
朝食を頂くの画(お湯沸かし中)
朝食の日清カップヌードルとスニッカーズを口にし、食後にメルボルン発祥の紅茶、T2で一息つく。何の合図もなくお互い違う方向に歩き出し、昨日の食事を直接地球に返却する。
実は・・・この日の朝、聞いた話によると、大島さんは昨夜から下痢が続いてほとんど寝られていないというではないか。食べたものがいけなかったのか・・・。否、2人とも同じような食べ物であり、食あたりするようなものも食べていない。違う種類のドライフードを食べたまで。
食べ物というよりは体調にとって良くない何かが起こったのだろうと推測する。胃腸が大島さんの張りつめたテンションについていけなかったか・・・。
ただ「山口さんのいびき、響いてました。」
『えー!!! 大島さん!申し訳ない!!!』
おれは日中の気温で温まったワインを飲んで、たっぷりと8時間は寝た。いつもと違う空間で固い寝床でありながら何度も寝返りを打ちつつ睡眠時間は確保している。騒音はない。何も聞こえない。
そう、自分には・・・・。
体調が悪いとはいえ、ここに留まっていても日が昇れば灼熱地獄になる。「先へ行く。」という大島さんの意思に合意。まずは昨日、あと一歩のところで到達できなかったポイント、プルニボア(Purni Bore)へと向かう。距離にして10㎞もない。
昨日はこまめに数キロおきに車を止めて待っていたものの、今日はもう少し距離をあけてもいいという。私自身、砂地での運転の感覚が戻ってきたのと同様、大島さんも砂漠で自転車に乗る感覚が戻ってきたようだ。
自転車で移動する大島さんよりも当然車での移動のほうが早い。一足先にプルニボアに着いていた私は1人車でオフラインで出来る仕事を持ち込んでいた仕事をこなしていた。
後に追いつき、プルニボアに到着した大島さんが間髪いれず指摘する。「山口さん、セーフティフラッグついていないです!!」
なぬっ!! どうやらここに向かう途中、セーフティフラッグを落としてしまっていたらしい。ガタガタ道で常に車の中は騒音が広がる。正直多少の音は気にならない。
車外の屋根に付けている旗が前に落ちてくれば気付いたのかもしれないが、後ろか横に倒れるような形で落ちたと思われる。
↑ この旗の先端部分がネジが緩んだようで、外れてしまっていた・・・。
「まさか道中に落ちていたフラッグが我々のだったとは・・・。持ってくればよかった・・・。」と大島さんが嘆く。
いやいや、大島さん、整備していなかったおれが全ての元凶。ガタガタという言葉では片づけられないレベルの道を散々走ってきていながら、ネジ締めチェックを怠った為、こうなったまで。
大島さんがここから戻って6キロ行ったところに落ちている。という。戻ると本当に6キロ地点に落ちている。正確なオフラインGPSと厳格な性格の大島さんに助けられた。
往復12㎞分の余分な軽油を消費してしまったものの、何とかフラッグを回収。この砂漠地帯ではこのセーフティフラッグなしでは走行は許されていない。とにかく見つかってよかった・・・。
再度プルニボアに戻ったところで、ファミリーキャンプをしていたお父さんと少し話を交わす。こんな僻地へ小学生低学年程度の2人のお子さんをお連れだ。
学校を休ませて大自然体験を満喫しているのだろう。賛否あるかもしれないが、これも教育と言える。目の前の義務教育や座学よりも、大自然での学習は何者にも代え難い。しかも聞けば家族で来るのは3回目だという。ツワモノだ。
少しばかりこのご家族のロジャーというお父さんと立ち話をしていると、どうやら
我々のゴール地点バーズビル(Birdsville)から来たことが分かった。
目的地は違えど同じ道を逆方向に行くもの同士、お互いここまで通ってきた道の状況を伝えあいつつ、追加で自転車で旅する冒険サポートのお話をする。
「なるほどな。さっき自転車に乗っていたのはお前のツレだな。無茶なことすると思ったけど、サポートカー付きか。なるほど。アドベンチャラーなんだな。あいつは。」などと会話する。
「水はあるか?ガソリンはあるか?この先の空気圧はだな・・・」など色々と気を使って頂いた。家族やキッズたちとも手を振って別れる。キッズたちもWi-Fiやゲームなどとは全く無縁な場所で大自然を満喫し、満面の笑顔だ。
最後にお父さんが「ここはホットシャワーが出るぞ!浴びていかんか??」という言う。まるでウチのシャワー使って行けよ。というような感じだ。
『自転車のヘンタイ、アドベンチャラ―おじさんを追いかけないと!』と言って玄関先で失礼した。温かい家族の皆さんと手を振り別れた後、大島さんを追う。
プルニボアのトイレ&シャワー(この先、このような設備は一切ない。)
昨日よりも砂が深くなっているだろうか・・・。
砂が深くなってきた、と思っているとガタガタ道も出てきたりする。砂漠道も表情を変えてくる。
昨日50㎞の砂地を走り、食べたものを上から下から茂みで排泄しながら、自転車の前後左右に荷物をひっかけ、総重量70㎏のファットバイクで、砂漠を走っている。これは3日分の水や食料を積んでいるから。
2人がはぐれるケースも想定してのこと。また大島さんが自力でギリギリ運べる重量でもある。
どこまでも果てしなく続いているように見える砂漠の中の轍を何とか58kmを走りぬき、ヘロヘロになりながら、本日の冒険を終えた。
砂地に宿を設置する。落ちている小枝を集めてきて火をつける。この頃になるとあれだけいたハエがウソのようにいなくなる。夕暮れと共に奴らも寝床に帰る。そして、空気が冷え始める。
夕食を準備していると満月があがってきていた。相変わらず写真はうまく撮れていないが・・・。明日へ向けて休みを取ろう。大島さんのセンシティブなお腹が治りますように・・・。
⑪に続く
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