世界最大の砂漠を自転車で横断するサラリーマン冒険家のサポート⑬

シンプソン砂漠(恐るべき空白)

の続き

この日も快晴の朝が訪れる。

この時期のシンプソン砂漠は温かい。朝でも気温は10度を超えるレベルで朝晩が快適。その分、日中の気温は35度を超えることが常。大島さんはこの気温で総重量70㎏の自転車を乗っては降りて、押し上げるを繰り返す。

腰をすべらせ、お腹を下している状態で・・・。見ているこっちが滅入ってくる・・・。大島さんのすごいところは基本的に感情にかまけた言葉や表情の変化がないこと。

男同士の旅でここまで一緒にいると相手の嫌な部分も見えてくる。都会での2時間の飲み会であれば、面白い人もいるもんだ。で済むだろうが、毎回朝から晩まで顔を合わせている同性の人などイラつきの対象かもしれない。でも、彼はそれをおくびにも出さない。

自分自身はどこかで、お互いの感情がぶつかるような場面もあるかとも覚悟していた。それぞれ感情があり、またある程度社会で働いてきた我を持った人間。イラつきから始まり、その後の一挙手一投足にも嫌気が刺すような瞬間もくる。そう思っていた。

でも彼は感情がぶれない人。内心ではそういった感情を持つ瞬間もあっただろうし、今この時もそう思っているかもしれないが、それをうまくコントロールしているように見える。彼は何かをしてもらった時に必ずお礼が返ってくる。

これも信念なのだろうか。サポート側にも気を使っているような人だからなのか、ただただヘンタイだからなのか、そもそも規定外の冒険を続けられるのも何かこのような感情も関与しているのかな。と思ったりもした。

そして、その強靭ハートの持ち主で気遣いの人は、朝の出発の段階でこの先のQAAライン到達という新たな難関の入り口までの45㎞を本日の目標と掲げていた。

昨日、フラフラながらも走った15㎞である程度の自信を得たのか、はたまたやれる。と踏んだのか、いずれにしてもいくつもの砂深い砂丘超えの難所が続くこの道で、今もなお、フラフラながら高い目標を掲げた。

体の心配もあり、5㎞ごとに車を停めて待つ。状況を聞いて、また5㎞。途中で休みつつもこれを繰り返す。

フレンチラインという東西に伸びる砂丘超えの通りを行く。昨日もその難所の一部を超えている。その際の大島さんの感覚では今までの道ほどではない。と言う見立てだった。ところが、このフレンチライン、我々が得ていた事前情報の『難所』は間違いではなかった。

次々と砂が深く、さらに高く長い坂が何個も目の前に立ちはだかり始める。前評判通りともいえる坂が現れる度に、歯ぎしりをしながら、上っていく。砂に埋もれながら這うように上る。

シンプソン砂漠横断はそう甘いものではない。車での移動がこんなにも大変なのに・・・。

幾つもの砂丘を超え、乾いた塩湖の真ん中を滑走し、昨日の走行分と合わせフレンチライン42㎞の走行を終えようという頃、そこにはポエペルコーナ―(Poeppel Corner)という場所が。

このシンプソン砂漠はブリスベンやケアンズなどがある、QLD州(クイーンズランド)、アデレードなどがあるSA州(サウスオーストラリア)、エアーズロックやダーウィンなどがあるNT州(ノーザンテリトリー)の3州にまたがっている。

このポエペルコーナ―はこの3州の州境ポイントとなる。

国境を跨ぐ、州境を跨ぐというのは過去に経験があるが、3州の境界線の上に立つという珍しいことが出来る。

オフラインマップによると現在地はここになる。

当然このあたりはWi-Fiはないものの、オフラインマップが多いに役立つ


「だから?」と言われたら、それまで。「そこに何があるの?」と言われても何もないし、誰もいない。行ったことがある人が偉いわけでもない。でもそこでは特別な体験が出来る・・・気がする。

そこまで足を延ばしひとしきりパチリパチリと写真を撮った後、QLD州へと走行の場を移す。

これからQLD州へと活動の場を移す。スタートしてから、だいぶ東へと移動してきたことになる。

SA州とNT州は時間は同じ。QLD州はこの2州よりも30分時間が進んでいる。オーストラリアは大陸が大きいので仕方がないのだが、同じ国でありながら、州によって時間が異なる。場所によっては最大3時間の時差があり、電話会議の時など、この時差の違いが微妙にしんどい。

この州跨ぎで突然30分時間が変わる経験を経て、さらにゴールへと近づいたと実感する。スマホは本当によく出来たもので、オフラインマップ上でQLD州の時間へと自動的に変更になった。Wi-Fiには一切繋がっていないのに。これにはびっくり。 

そこから先もいくつか東西の道の砂丘超えをこなす。

この近郊は地下水が多く残る大鑽井盆地。こうして見ると草木も多く生えている。

当初から難所と踏んでいた東西の道、フレンチラインを超えた大島さん、続く南北の道はその砂丘の間を抜けるような道でどちらかという南北の道のほうがアップダウンが少なく比較的走行しやすいレベル。ここから18㎞は束の間の北へと向かう砂丘の間を走るK1ラインとなる。

幾つか車が走れそうな道が出来ているが、走り易そうな塩湖沿いを選択。大島さんも後に続く。ただ、白く塩を残して渇いた塩湖は照り返しが強く、とんでもない照り返しが襲ってくる。道は比較的安定しているものの、猛暑に襲われる。一部では小規模ながら竜巻も起こっており、風が強くなる前に抜けたいところ。

暑さと戦い、休憩を取りながら、目的地となるQAAラインへ到達。ここで終わると思いきや、 「もう少しやる!』という。もはや驚きはしない。ただただ、指示に従い、『了解した。』とまた車を走らせる。この意地と、根性にはほんと感嘆する。

それでも時間は無限ではない。夕暮れと同時にこの日は終了。

この日、彼は目標の45㎞を大幅超えるに65㎞の砂漠を走ったのだった。

夜はゆっくりと。と思いきや、何頭かのディンゴが我々を様子見に。ライトを照らすと目だけが赤く光る。鼻が利くおおかみ犬が食料の臭いにつられてやってきたのか。大人が襲われるようなことはまずないものの、こちらは万が一の際には車に入れるように。という策。

2人のテントがやたらと近い。いびきがうるさすぎて大島さんに寝首をかかれませんように。

⑭へ続く

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